胃腸薬「正露丸」の試験結果を改ざんして出荷したなどとして、富山県は２６日、富山市の製薬会社「キョクトウ」に対し、医薬品医療機器法に基づく業務停止命令を出した。３０日から、医薬品製造を２３日間、販売を２２日間停止させる。
富山県によると、同社は有効成分の一種、ロートエキスが国の承認規格より少なかったにも関わらず、試験結果を改ざんして商品を出荷していた。２０２２年夏に実施された県の抜き打ち調査で不備が見つかり、同社によると試験結果の改ざんは少なくとも３０年以上前から行われていたという。
同社は問題発覚以降、基準を満たさない可能性がある５１６万個の自主回収を行った。これまで健康被害の報告はなく、県は重篤な健康被害が発生する恐れはないとしている。
原因はなに？ 「キョクトウ」のコメント
同社は「法令順守の意識が欠けていた。関係者の皆さまに対し、心からおわび申し上げる」とのコメントを発表した。
また、処分に至った経緯や原因に関して、作業人員に比べて生産数が過多で、生産計画のひっ迫が常態化していたとした。虚偽の試験記録を作成した理由について、担当者は「検査責任者は既に退職しており、作成を指示した理由は分からない」と話した。
正露丸の効果は？
ラッパのマークで古くからおなじみの正露丸は、いわゆる整腸剤です。その目的は腸の働きを整え腹痛や軟便、下痢の症状を改善することです。（胃薬とは違います）
腸には蠕動運動で便を肛門に向かって移動させる働きと、摂取した水分を吸収する役割があります。腸管には経口摂取した水分、食物に含まれる水分や消化液など一日に約9Ｌの水分が流れ込みます。そのうち7L程が小腸で吸収され、残り2Lの水分や電解質が大腸で吸収されます。
何かしらの原因でこの働きに異常をきたすと、腹部の不快感や違和感、腹痛、軟便、下痢などの症状をきたします。
整腸剤にはこのような腸の異常な働きを整える作用を期待できます。
- 腸の蠕動運動亢進による腹痛、不快感～腸の動きが活発になると腹痛や不快感伴うことがあります。薬の効果で腸の働きを抑えることで症状を改善します。
- 腸の蠕動運動亢進による下痢・軟便～経口摂取した水分は腸で吸収されます。腸の蠕動運動が活発になることで、水分が吸収される間もなく移動してしまい、下痢となって排出されてしまう。
- 腸管の水分吸収能の低下による下痢～腸管で水分が吸収されないため、下痢となって排出されます。
- 腸管の水分分泌過多による下痢～腸管からの水分の分泌が過剰になり、吸収が追い付かなくなり下痢となって排泄される。
その他にウイルスや細菌感染による腸炎でも下痢になります。これは、ウイルスや細菌を体外に排出するための作用のよるものです。この場合、整腸作用のある薬を服用し下痢を止めてしまうと、ウイルスや細菌の排出を抑える恐れもあります。医師や薬剤師と相談し服用を検討するのが良いでしょう。
製薬会社による相次ぐトラブル
富山県内では２０２０年度以降、製薬メーカーの不適切製造が相次いでおり、行政処分は今回で７件目となった。現在県内の製薬業界は県と連携し、経営層を含めた研修会の実施や品質保証体制の整備を進めていた中で発覚した今回の一件に、業界関係者からは「ありえない」「誠に遺憾なことであり、ざんきに堪えない」
小林製薬の紅麹による健康被害など、製薬会社による大きな問題が続いている。一日でも早く消費者が安心しできる体制づくりを成し遂げてもらいたい。
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